福州から武夷山へ移動
福州、武夷山、泉州の3ヵ所を移動する際のルートの選択は悩ましい。福州-泉州間は2時間半で移動できるのであるが、間に武夷山を挟むと、福州→武夷山→泉州の移動が、それぞれ5時間以上もかかってしまう。2014年の情報である。ここを旅行先に選んだのは、「山の上の岩地で採れた武夷山岩茶を飲んでみろ。お土産は大紅袍(だいこうほう)だ」と、のたまう悪友の強迫が引き金である。
もう一つ、移動に関する情報である。ある旅行ガイドブックには、 武夷山に行き来する場合には武夷山市長距離バスターミナルが良く使用されると書いてあったが、福州や泉州からの長距離バスが止まり、かつ『風景名勝区』にも近い『武夷山度假区バスターミナル』がお勧めである。あらかじめバスの運転手に行きたい所を伝えておくと、覚えていて合図をしてくれる。
ここのバスターミナルはビルの一階に入っていて、独立した建物ではないので、いつもとちょっと勝手が違うが、運転手もターミナルのスタッフ達も、ホテルや名勝区への行き方を熟知していて、まるでツァリスト・インフォメーションのようである。気持ちが良い。おかげで短時間で旅行計画も決まり、3日後の泉州行のバスチケットも購入した。バスによる長旅の疲れも吹っ飛んで、バスターミナルから歩いて5分くらいのホテルにチェックイン、“エコノミー症候群 ” 対策の運動も兼ねてすぐに周りを散歩した。この旅游度假区を南北に走る『三姑街』を中心に土産物屋、ホテル、レストランが軒を並べて賑わっている。土産物屋と言っても、メインは「お茶、お茶、お茶」である。街の中にお茶以外の店を見つけることが難しいくらい『お茶』の店の連続であった。おかげで、お茶について随分と詳しくなった。『三姑街』の北の突き当たりは、『武夷山美食街』になっていて夜も賑やかである。
武夷山風景区から水簾洞景区
(爆睡直前の)熟睡で昨日の長距離バスによる移動の疲れもとれた。今日は、ユネスコの世界複合遺産となっている『武夷山風景区』を歩く予定である。景区への入場は村から数キロ離れた『景区北門』と『景区南門』の2か所があり、どちらへもバスで行くことができる。また、南北のどの入口でも入場後に『武夷山観光専用車』で相互に移動が可能である。但し、風景区の山の中自体では観光客を移送するサービスは少なく、歩くことが主体である。
小さな地図をとっかえひっかえしている私に気づいて、50代くらいの中国人男性が、「フォロー・ミィ」と言ってくれて、歩を進める。速足の男性で、そしてパチパチとシャッターが忙しい。彼がどこに向かうか、すぐ分かった。「大紅袍」と赤色で書いた大きな石が見えたからだ。
一線天景区
「心臓の弱い人、体の厚さが50センチ以上の人は進入禁止」となっている『一線天景区』である。名霊山とも呼ばれる高さ60メートル余りの岩山に広い所では幅1メートルほど、狭い所では40センチメートルほどの巨大な裂け目ができていて、中へ入ると、裂け目から一直線の陽光が入ってくるように見えるのである。確かにその圧迫感は強烈である。裂け目の地面には石段が敷いあって歩きやすいのであるが、蝙蝠(こうもり)の糞の異臭に耐えられなくて戻ってくるご老人もいらっしゃった。
体型に問題なし、臭覚に鈍感な私は、ステップを踏んで幻想的で神々しい光を楽しんだ。
天遊峰景区
ここからの眺めが武夷山で最も美しいと言われる『天遊峰』は人気の景区である。奇峰と清流という最高のコンビネーションが織りなす風景は多くの人々を引き付ける。竹製の筏に乗って曲がりくねった清流下りを楽しむ“九曲渓の筏下り”の景色を自分は観客となって山の上から楽しんだり、季節と時間は限定されるが、雲と霧でまさに墨絵の世界を写し出す『雲窩』など、盛りだくさんの景区である。
『天遊閣』という建物があって、二階は、あの『宋美齢』の舞庁旧址になっている。1936年、武夷山にあこがれる蒋介石夫妻を迎えるために、ここに宋美齢のダンスホールが作られたが、西安事件が勃発により、結局二人は一度も武夷山に来ることはなかったということです。
武威宮景区(九曲渓)
今日は、武夷山4日目。午前中に『武威宮景区』を巡る。9ヶ所の湾曲からできた九曲渓9.5キロメートルを1時間半をかけて、両岸の奇峰を眺めながら筏(いかだ)下りを楽しもうという魂胆である。 100元 が高いか、安いか?武夷宮は『九曲渓筏下り』の終着点になっており、筏を降りた後、清代の町並みを再現した『仿宋古街』と名付けられた通りを進むと武威宮に辿り着く。
食事をすませた後、大事な仕事がある。悪友から頼まれた烏龍茶のトップ「大紅袍」を買わなければならない。「岩肌の狭い所に生えた茶樹の葉でなければ三流品です」と、教えられている。大丈夫だ。
そして、小さなポットを買ってある。毎日訪れて、すっかり仲良くなったバスセンターのお姉さんからお湯も貰った。これに「大紅袍」の茶葉を入れればOK。自分用のお茶の準備はできた。午後にバスで6時間かけて 『泉州』へ 移動する予定なので、水分補給も大丈夫である。